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第108話 優しいだけでは

Autor: 雨音休
last update Data de publicação: 2026-07-12 06:03:03

 夜月よるつきが堂々と言い放つ。

「私はヒイラギの息子です」

「「ヒイラギの息子?」」

 トウマとベルフラウの疑問の声が重なった。

 空ではカモメが気持ち良さそうに泳いでいる。太陽の光が反射して夜月の眼鏡がギラリと光った。ふっと風が吹いてトウマの青い髪がサラサラと揺れる。ベルフラウと晴恋のスカートがひらひらとなびいた。

 夜月が眼鏡のふちを左手でくいと上げる。

「はい」

「ヒイラギに息子なんていたのか?」

 トウマは怪訝な表情で尋ねた。

:ヒイラギって誰?

:セレクターのマスターじゃん?

:有名な迷惑プレイヤーな。

 夜月が鼻で笑う。

「いたんですよ。両親はもう離婚しましたが、私は父方に引き取られましてね。そして――」

 彼が冷笑する。声を紡いだ。

「父はいま、病床に伏せっています」

「病気?」

 トウマがまた聞いた。

「はい

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  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第163話 好きな人がいるから

     ユウマが高校一年生の頃の話。 その日。図書館で調べ物をするためにユウマは早起きして学校へ向かっていた。 七見丘駅まで自転車で向かう。田んぼに囲まれたアスファルトの道をのんびりと進む。田んぼには水が張られており、良い景色を見渡せた。梅雨時だが今日は晴れていた。むしむしとした空気が身体を撫でる。もうすぐ夏が来る。今年も酷暑だろうか? 駅で自転車を止めて電車に乗った。早朝であり乗客は少ない。イヤホンで音楽を聴いていた。ゆらりと揺られて目的の駅に到着する。ここからは徒歩だった。シャッター街と化した商店街の歩道を歩いていく。高校に着くと玄関で靴を履き替えた。 何の変哲もない一日。 それは、学校の渡り廊下を通ったところで激変する。「真帆さん、俺と、付き合ってください!」 渡り廊下のすぐ近くの地面で、一人の男子生徒が真帆に告白をしていた。 靴ひもの色から、相手は上級生だと分かる。 この高校は県でも名門校だ。ユウマは大学受験のために進学していた。どうしてか真帆も同じ高校に進学している。一年前、ユウマが真帆に必死こいて勉強を教えたのだった。その頃、真帆は言った。「頭の良い高校を出た方が、就職に有利よね!」「まあ、確かにそれはそうだが、お前、勉強は大丈夫か?」「大丈夫だわ。ユウマが教えてくれるもん」「……おいおい」 真帆は運良く受験に受かった。そういう訳で二人は高校を同じくしている。 真帆はバドミントン部であり朝練があった。だから早く来ている。朝の通学ではすれ違ったようだ。 上級生は真剣な顔つきである。 部活の半袖を着た真帆の頬がほんのりと桃色に染まっている。 しまったと思った。(真帆、まさかオーケーするのか?) 大ピンチである。 ユウマはそっとしゃがみ込み、渡り廊下の壁に隠れた。 真帆のしんみりとした声がした。「ごめんなさい、先輩。あたし、好きな人がいるから」「それって誰

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第3話 排除

    ロッジのような一室。木造りの天井と丸太で出来た壁。そこのベッドにユウマは腰掛けていた。 ここがゲームの中らしい。 顔の前にはステータス画面のような半透明の青いボードが浮かんでいる。 システム音声が響いた。 「プレイヤー様。VALORIUMオンラインの世界へようこそ!」 「あ、はい」 「まず、プレイヤー名を決めてください」 「トウマで頼む」 彼の本名は冬野悠馬である。 「トウマ、その名前は使用できます」 「良かった」 「次にゲーム内職業を選んでください」 画面には様々な種類のジョブが並んだ。 そして右上には特別コード入力の文字。そこをタップして、暗記し

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第2話 ログネスト

     ログネストの玄関は広い空間になっている。背の高い天井。タイル敷きの綺麗な床。 しかし、空気は息苦しいほど重かった。 今も、通路からドリンクを汲みに来た利用客がある。ちらりと振り返ると、寝ていないような疲れた顔をしていた。 ふと隣には男性店員に連れられた太り気味の客がやってきた。太り気味の客は男性店員に頭を下げて大声を出す。 「待ってください! あと五時間、五時間プレイできれば、ヴァルを払えそうなんです!」「お客様、すでに退室の時間でございます」 (……ヴァル?) 背中に鳥肌が立つのを感じながらユウマはカウンターに向き直る。 茶色い受付台を挟んで、ユウマの前には女性店員が立って

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第1話 詰み

     それは、どこにでもある小さな“シアワセ”だった。 朝。寝息を立てているユウマの肩に、妻が優しく手を置く。 「ユウマ、起きて起きて」「むにゃむにゃ、もっと寝てたい」「駄目。会社に行く時間よ」「ぐぐー、ん、朝?」  瞳を開く。目の前には妻の優しい笑顔があった。ユウマはダブルベッドから上半身を起こし、右手を口元に掲げて大あくびをする。 「ふわあ」「あら、大きなあくびですこと」「朝食は?」「出来ています。着替えて、ダイニングへ来てくださいな」「ああ、分かった」  クスッと笑って妻が部屋を出て行く。スリッパの足音が遠ざかって行った。 ユウマはベッドから出て支度をする。ワイシャ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第47話 それぞれの準備

     ――ヒイラギがノーファン村の領主に任命された その一文は、ログインをしているプレイヤー全員の頭上に表示されたのだった。 ノーファン村のヤマネコ食堂。そこでは小さな宴会が行われていた。 直方体の木造りの室内。木製のテーブルが規則的に並んでいる。古めかしい定食屋といった雰囲気であり、テーブルの上には様々な料理と酒瓶が並んでいる。焼き肉、油淋鶏、鳥の軟骨の串焼き、レバニラ、揚げ豆腐、ウインナー、山盛りフライドポテト、サラダ、他にもたくさん。 壁の掛け時計を見てウミは眉尻を下げた。いま午前八時前。悲しみの吐息をつく。 これから、どうなるのですか? 今頃トウマは、何をしているでしょうか。

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